カテゴリ:旅 の記事一覧

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アラスカ18日目





これは2011年の夏、

僕がでかいバックパックを背負い、
たった一人でアラスカを旅したときのはなし。






18日目



僕はスワードという小さな港町に来ていた。


もともと帰国前の数日はアンカレッジで過ごす予定だったが、
特にやる事もなく、アラスカでの時間を無駄にしたくなかったので
急いで滞在していたホステルを出て、バスに乗った。

2泊分の宿泊費が返ってこなかったのが痛かった。



到着すると、分厚い雲が立ち込め、
町に人は少なく、また氷河が近くにあるのでかなり寒く、
なんだか陰欝な印象を受けた。




しかしその次の朝は違った。

朝食を食べ終え、
道路に出た瞬間から違ってた。



昨日の雲は晴れ、
青い澄んだ空が広がり、
町は朝日に包まれていた。





海辺へ行くと海はきらきらと輝き、
子ども達は幸せそうにはしゃぎ、
タカが頭上を舞い、
わたりガラスの群れが朝日を受けながら海上を飛んだ。


全てが光に包まれていた。




海沿いの道を歩き始めると、なんだか涙が出てきた。



悲しいわけでも
嬉しいわけでもなかったが
なんだかとても幸せで
心は満ち足りていた。








「そうか、もうアラスカでの旅は終わるんだ」

ゆっくりと歩きながらふとそう思った。














アラスカにはまた来るだろう。
また次こそはバスに行けるように。
そしていつか結婚して子どもができたら。















最後に、アラスカの荒野のバスで餓死した男の言葉を掲載する。




It is the experiences, the memories, the great triumphant joy of living to the fullest extent in which real meaning is found. God it`s great to be alive! Thank you. Thank you.

これは経験であり、思い出であり、せいいっぱい生きることのすばらしい勝利の喜びである。そのなかに、真の意義があるのだ。神よ、生きていることはすばらしい!感謝いたします。感謝いたします。














*アラスカで見た野性動物*
ムース
カリブー
ヒツジ
グリズリー
リス
ウサギ
ビーバー


*アラスカで食べた動物*
ハリバットのフィッシュ&チップス
子グリズリーのハンバーガー
トナカイのホットドッグ的な軽食
ムースの肉
サーモン

*アラスカで経験した事*
キャンプ
カヌー
トレッキング
軽い山登り
ヒッチハイク
巨大なオーロラ
温泉
最悪なホステル
氷河観測
ひもじい食事
孤独














アラスカでの旅のことをもっと書いてほしいという要望があれば、
また書きたいと思います。


コメントとかしてね。







ではでは

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アラスカ8日目

これは2011年の夏、

僕がでかいバックパックを背負い、
たった一人でアラスカを旅したときのはなし。









8日目


本当に目覚めてからしばらくテントの中でじっとしていた。
外の物音に全神経を集中させた。



思い切ってテントのチャックを開ける。


何もいない。

朝の冷気に凍えながら無事に朝を迎えられたことに感謝する。



周囲に危険がないか確認しながら急いでテントをたたみ、荷物をまとめる。
まだ朝の冷気が漂う中、きのう進んできた道を歩きはじめた。



5分ほど歩くと湿地帯に出た。

道の両側に生い茂っていた白樺やトウヒは消え、一気に視界が開けた。
一面に紅葉で赤くなった低木草が繁茂し、所々にトウヒがぽつぽつと立っていた。



視界が開けたことで樹々の影に隠れていた朝日が姿を現した。
朝日は僕の真正面から昇り、周囲の紅葉した葉を真っ赤に染めていた。


真っ赤に燃える荒野の中で、僕はたった一人で立ちすくんでいた。
草、樹々、沼、雲、遠くの山々、全てのものに朝日は降り注ぎ、全てが美しかった。


草や葉の一つ一つが鮮明に浮かび上がり、それを見て感じたのは、
それぞれが美しく生きており、いま自分もその一つであり、全ての一部であるということ。



野性の偉大さを知り、自分の小ささを痛感した。



また歩き出した。
脚が痛かった。
しかし止まらなかった。



一刻も早く熊の恐怖から遠ざかりたかった。
生きねばと思った。生きるために歩かねばいけなかった。
朝から水も食べ物も口にしていなかったがこの生きたいという意志だけで力がわいてきた。





人は自分の死に直面した時に、最も生を感じる。
と言葉では、つまり頭では理解していた。


しかし実際に自分の身体で感じたのは初めてのことだった。



それは思ってたほど気持ちのいいものでも、感動的なものでもなく、なまなましかった。



この時は、自分が生き残れるのか、熊に襲われるのか、確率は五分五分のように思われた。
自分が生き残れるのか自信は持てなかった。



しばらく行くと湿地帯を抜け林の中を歩いた。
いいかげん力がでなくなってきたので、休憩し、栄養ドリンクを飲んだ。
休憩中も周りになにかいないか注意した。



また歩き始めると、左側の林からガサガサと音がする。
恐怖で立ち止まった。




うさぎが前のほうをぴょんぴょんと跳んで行った。






ビーバーダムを出発して1時間ほど経っただろうか。
人間を見つけた。

驚いた。


テントの前の焚火の前で座っている。
向こうはまだ気づいていない。


少し迷った後、heyと叫んだ。
熊みたいな身体をしたその男はgood morning!と応えた。






名前はロン。
ツアー観光やレンジャーの駐屯地的な役割をしているらしい。
4ヶ月もここで生活しているという。

気さくな男だった。
また二日酔いらしかった。



暖かいビーフシチューと冷たいレモネードを頂いた。
暖かいものを食べ、焚火にあたり、人と話し、不安と緊張は過ぎ去った。



20分ほどすると4台のジープが到着し、
たくさんのじいさんばあさんの観光客が出てきた。


ツアーの先導はポールという若者だった。
そしてなんとジープで僕を連れて帰ってくれるという。




昨日あれだけ苦労した道を、1時間ほどで走り抜けた。
そしてハイウェイ沿いのガソリンスタンドで下ろしてくれた。




ガソリンスタンドの横でお湯を沸かし、
甘ったるいインスタントコーヒーを飲み、
自分が生きていることを感じた。



もう熊の恐怖はなくなっていた。



しかしなんとなく寂しいような、
そんな気持ちがふと込み上げてきた。







要するに僕は熊の足あとを見てビビって帰ってきたわけだ。

非常に悔しいが正しい選択だったと思う。
人生においては諦めを選択せざるを得ない時がある。
この退却から得るものは大きい。




いや、もしそのまま進んでいれば無事にバスに辿り着けたかもしれない。
その後の天気も悪くはなかったし。



いや、それなら熊に殺されたかもしれないという可能性も拭いきれない。

また、ロンによると僕が来る一週間ほど前に4人組がバスを目指して行ったそうだが、
河を渡った後に嵐が来て河は増水し、結局彼らはヘリコプターで救助されたという。




もしもを考えるのは無意味だな。
事実として僕は2年半待ち望んだものを諦め、道を引き返し、いま生きている。また来れる。



次は独りでなくてもいいかもな。















星野道夫の言葉を引用する


もしアラスカに一頭のクマもいなかったら、
僕はまったく平和な気持ちで山々を歩けるだろう。
安心してキャンプもできるだろう。

でもそんなアラスカってなんてつまらないのだろう!

ここでは人々はクマとともに生きている。
人間とクマの間には戦争のような緊張感がある。
そしてそんな緊張感から人間にはある種の価値観が生まれている。

人間は自然を飼い馴らし、征服しようとし続ける。

しかしクマが自由に徘徊するような野性がまだ残っているところを訪れた時、
僕たちは本能的な恐怖を感じていく。

そのような緊張感をもてることはなんて素晴らしいのだろう。

そんなことを感じさせてくれるようなところ、
そしてそんなクマたちはなんて素晴らしいのだろうか。











ではでは^^

アラスカ7日目

これは2011年の夏、

僕がでかいバックパックを背負い、
たった一人でアラスカを旅したときのはなし。












7日目




天気は快晴。

じりじりと照りつける日の下、
20kgはあるであろうバックパックを背負い、
ひたすらアスファルトの上を歩く。





昼過ぎ、

やっとスタンピードロードの標識を発見する。



標識の下で腰を下ろし、
スニッカーズを食べ、
水を少し飲んだ。



5分ほど休んだのち、
僕はついにスタンピードトレイルを歩きはじめた。

僕がアラスカに行きたいと思ったきっかけも、いちばん行きたかった場所も、すべてはここにあった。







2年半前、

イントゥ・ザ・ワイルドという映画を観た。




あらすじを説明すると、
今から20年ほど前、アメリカの若者が財産を全て捨てて旅に出た。

2年の放浪の末、彼が最後に目指したのがアラスカだった。

彼はアラスカの荒野でバスを見つけそこに住みつき、荒野で自給自足の生活を始めた。
もともとそのバスはハンター達の避難所として使われていたものだった。

しかしその4ヶ月後、彼はそのバスの中で餓死した状態で発見された。



そしてそのバスが位置するのがスタンピードトレイルなのである。




スタンピードトレイルを歩きはじめてから3時間後、
今までアスファルトだった道が未舗装の砂利道になる。



道はさらにひどくなり、
でこぼこになり、
水たまりだらけになり、
石だらけになり、
沼地になり、
さらには川の水が流れ込んで道が川となっている場所もあった。





たまに誰かがキャンプしたような跡を見つけた。



人間は道が未舗装になってから見ていなかった。



たまにリスを見た。







新しく買った靴とジーンズは泥まみれになり、
ヒートテックも砂まみれになった。





バスまでにたどり着くには河を2つ渡らなければいけなかった。





しかしいくら歩いてもいっこうにそれらしき河が見当たらない。
道もタイヤの跡があるのみで本当にこの道であっているのか不安になってきた。




スタンピードトレイルを歩きはじめてから5~6時間は経っただろうか。



身体の疲労は限界にきていた。



重たいバックパックは肩に食い込み、
左足のかかとの皮がはがれ、
小指の爪は内出血していた。





大きなビーバーのダムを見つけた。

すぐ横の少し高い場所にむかし誰かがキャンプした跡があった。



身体の限界を感じ、そこにテントをはることにした。





道が正しいのか確信が持てなかったため、
荷物をそこに置き、もう少し先まで歩いてみようと思った。

疲れてはいたが、重たい荷物がないため足どりは軽かった。








15分ほど歩いただろうか、



小川の水が道に流れ込み、土は柔らかく、歩きずらかった。







足元に注意しながら進んでいくと全く予想外のものを発見した。








熊の足あとがきれいにくっきりと柔らかな土の上に残されていた。



自分の足あとと比較するとさして変わらない、新しいものだった。
10mほど先にもいくつかあった。






この道を熊が歩いていたのは明らかだった。









アラスカで熊といったらいちばん危険な野性動物である。



特にグリズリーは体長が3mもあり、人間なんで腕の一振りで殺せる。

いちばん荒野で出くわしてはいけない動物であり、出くわすということはつまり自分自身の死である。







火照っていた身体が急に冷めた。


しばらく考えたのち、
急いでビーバーダムへ戻りテントを張り、
夕食はテントから50m以上離れたところで温めもせず、いそいで食べた。





テントへ戻ると美しい夕陽がビーバーダムをきらきらと照らしていた。

しかし美しい夕陽は僕になんの感動も与えてはくれなかった。



その夕陽は迫りくる日没を意味し、恐怖と不安を増幅させた。

もし僕が守られた環境にいたならば、
大自然の中で見る夕陽に涙したかもしれない。



だが実際、僕はたった一人でアラスカの荒野にいたのだ。












寝袋の中で明日どうするか考えた。




進むか、戻るか。




たまに父が「引き際を見極めろ」みたいなことを言ってたのを思い出す。


何人かの友達に冗談なのか知らないが「生きてかえってこいよ」と言われたのを思い出す。


















明日の朝、引き返すことにした。











熊への恐怖の中、眠りについた。

少しの物音にも敏感になり、
何度も起きた。





夢で熊が襲ってきた。


目が覚めて夢だったか、と思ったらまだそれも夢でまた熊が襲ってきた。


そんなのが2、3回繰り返された。夢の中の夢の中の夢。

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